韓 太舜 教授 (Prof. Te-Sun Han)


Who's Who

---IS冊子から抜粋-----------


1.高度情報社会と情報理論ネットワーク基礎学講座では,高度情 報社会の動脈ともいうべき情報ネットワ ークの基盤技術を支える“情報の圧縮と 伝送”の基礎理論,およびそれらに関連 した諸問題の数理的研究を行う.この様 な基礎学問分野は総称して“情報理論” と呼ばれている.  情報理論は,1948年にShannon が書いた論文によって初めてそれ自身固 有の理論体系を備えた“学問”として誕 生した.デジタル通信技術全盛時代の幕 開けであった.通信技術の本質をデジタ ルと喝破し“符号化”の決定的役割を明 らかにしたのは,ひとえに彼の天才によ る.誕生から40余年の試練と蓄積を経 た今日,情報理論は,フアクシミリ通信, 画像処理技術,計算機通信,大容量ファ イル圧縮技術,テレビ会議,光通信技術, 衛星間通信など,高度情報社会における 広範な基盤技術を支える基礎理論として 確固たる地歩を築くまでに成長した.  現在でも,情報理論は,計算機科学, 制御理論,統計学,通信理論,モデル推 定理論,データ解析, 暗号理論,人工知能などの隣接諸分野は言うに及ばず,確率 論,物理学,数学などの分野とも密接に絡みあって相互に刺激しあいながら益々急速 な発展をとげつつある.  たとえば,情報理論の中で生まれたユ ニヴァーサルなデータ圧縮符号化理論の 成果は,データ解析や 自己組織システムの構築を目指すAI にも実際的な指針を与え ることに成功しているし,ファクシミリ通信や計算機データ・ファイルの圧縮技法と しても今や必須のものである. また,データ保護・暗号の研究も情報理 論の重要な分野の一つを成している.


2.情報理論研究の心とは何か

 すべての情報通信技術は天才 Shannon が明かにした情報の“符号化”という概念に基づいて 構築されている.したがって ,我々が情報技術の理論的可能性と限界というとき,それは“符号化”の理論的可能 性と限界のことを意味している.  我々は,これからも,この様な意味で の情報理論的な可能性と限界に数理的手 段を用いて挑戦し続ける.その心は“絶 世の美女を一生追い求める”かの如しで ある.絶えざる肘鉄の中で一瞬見せる絶 妙な微笑みの強烈な魅力,一度味わった らもう病みつき.偽りでない本物の美に 対する感受性を持つ若人達よ来れ.


3.情報理論は何を研究するのか

 いま13枚の金貨がある.その中の1 枚は贋金貨で重さが本物とほんの少しだ け違う.重いか軽いかは分からない.天 秤を何回か使ってこの贋金貨を見つけ出 したい.3回で十分であることを示せ. この問題が実は情報理論の基本原理の一 つである“エントロピー最大原理”を使 って見事に解決されるのである.  このように,情報を伝えたり,情報を 獲得したりする,あらゆる問題の背後に は必ず情報理論の基本的考え方が顔を出 す.問題の背後にある情報の本質を切り 出して理論化することが,我々の広い意 味での研究課題に他ならない.  第1節で述べた様な,もっと工学的な 立場から我々が現在興味を持っている研 究課題には,以下のようなものがある.

●ユニヴァーサルなデータ圧縮技法の研 究・開発および実際的問題への応用

●大容量計算機ファイルの圧縮問題

●圧縮データに基づいた統計的推論問題 --仮説検定と母数推定の最適化

●エントロピー最大原理によるモデル推定問題と最適化問題

  ●データ解析問題の情報理論的研究   --クラスター分析,パターン認識,統計的モデル推定問題

機械学習など

●近似乱数生成と高精度シミュレーション問題の情報理論的研究

●探索アルゴリズムの情報理論的研究

●歪を基準値以内に制限したときのデータ圧縮の最適アルゴリズムの研究

●通信路符号化の基礎的諸問題   ----情報を高速かつ高精度に伝送す るための

新理論・新手法の研究と開発

●多数のユーザーが一つの通信路を共有する場合の最適な同時符号化問題

●多数のセンサーが分散配置された通信システムの最適信号検出・符号化問題


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